• 2017年 3月 27日

現代のタイプ別名監督

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現代サッカーには様々なタイプの監督が存在します。今トップクラスの監督と言えば、チェルシーのモウリーニョ、バイエルンのヴァルディオラが双璧でしょう。これに昨シーズンの結果によって、レアルのアンチェロッティが加わったというのが一般的な考え方ではないでしょうか。この3人の監督は、チームへの取り組み方や個性が大きく異なります。それぞれのタイプを考えながら、現代の監督像をタイプ別に考えてみます。

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対応主義×モチベータ―×支配者=モウリーニョ

モウリーニョのチームの大きな特徴は対応力です。相手のチームを分析して、その良さを消し弱点を突くというサッカーは、勝ち方を知らないチームを勝てるようにするという意味で他の二人の追随を許しません。他の二人に比べると、戦力的に劣っている、ないしは互角の状況でこそ本領を発揮するのがモウリーニョと言えるでしょう。ポルト、インテルでのチャンピオンズリーグ制覇というのがその何よりの証拠と言えると思います。対応力というのは全ての監督が持ち合わせているものですが、モウリーニョのその力は同業者に比べても抜きんでていると言えるはずです。

またモウリーニョはモチベータ―としても優秀です。モウリーニョは対応型の監督であるがゆえに、選手のモチベーションを非常に重視します。対応するという事は、相手に合わせた戦い方を実現するという事です。自分たちが常に取り組んでいる体に染みついたやり方ではなく、相手に合わせたサッカーをおこなうためには、集中力が重要です。そのためモウリーニョは徹底して選手の闘争心を煽ります。その闘争心が、集中力を生み出し、モウリーニョの考えた対策を実行する力の源になるのです。

モチベータ―タイプの監督というのは増えてきたように思います。アトレティコのシメオネ、イタリア代表のコンテなどはモウリーニョと同じように、選手が全力で戦うことの出来るモチベーションを生み出すタイプの監督です。

そしてモウリーニョを特徴づけているのが、支配者としての側面でしょう。自らをスペシャルワンと呼び、選手の移籍に関しても権限を要求します。これは、モウリーニョがもともとプレイヤーではないことも関係していると思います。後述のヴァルディオラなどはプレイヤーとしての経歴が、監督としての仕事に好影響を及ぼしています。モウリーニョはそれが無かったために、自らのカリスマ性を演出する必要があったのだと思います。現役ではありませんが、アレックス=ファーガソンもそういった監督だったように思います。二人が仲が良かったのも、共通点があったからかもしれません。他にはファビオ=カペッロ、ルイス=ファン=ハールなどが当てはまります。

モウリーニョは現在チェルシーにおいて、かつての自分を乗り越えるような新しい取り組みを行っています。それは対応主義ではなく自分たちの理想を貫き通すサッカーであり、モチベーションを高め闘争心と集中力を限界まで高めるのではなく余裕をもって戦うやり方であり、自分を誇示するのではなくチームマネジメントに専念するやり方です。チェルシーでの二次政権でモウリーニョがどのような監督になるのか、非常に楽しみです。

 理想主義×革新×カリスマ=グァルディオラ

現代最高の監督を一人だけ上げるとすれば、それはグァルディオラになるでしょう。何故なら今回上げた3人の中で、チームを強くするだけではなく、新しい戦術を生み出しているのはグァルディオラだけだからです。

グァルディオラの大きな特徴は、その理想主義的なところです。グァルディオラにとって理想とは実現するものであって、現実と妥協するものであはりません。バルセロナのサッカーも、バイエルンで取り組んでいるサッカーも、グァルディオラ以外の人間であれば机上の空論と考えてしまいかねないサッカーです。どんな相手に対しても、基本方針を変更せずに戦うその戦い方も、理想主義者の特徴でしょう。それゆえツボにはまると、圧倒的な強さを見せるチームを作り上げることが出来ます。アーセナルのヴェンゲル、マルセイユのビエルサ、ラージョのパコ、リバプールのロジャースなどが同じ理想主義者と言えます。

革新的であるという意味でグァルディオラのような監督は他に存在しません。ほかの多くの監督が、様々な戦術を知ったうえで自軍の編成や、対戦相手によって戦術を選んでいるのに対して、グァルディオラだけは自分の理想の中にあるまだ見たことのない戦術を採用しています。グァルディオラの異質な点は、その中で結果を出している点です。現代サッカーでそれに類する監督は殆ど存在しません。イタリア代表のコンテやかつてのローマのスパレッティは新しい戦術を生み出したとはいえ、生み出し続けていると位意味でやはりグァルディオラは独特と言えるでしょう。

そしてその理想主義で革新的なグァルディオラを支えているのが、彼の持つカリスマです。独特な考えを持つグァルディオラは対立を招くことも少なくありません。温和なパーソナリティから見逃されていますが、バルセロナでは会長との対立があったり、バイエルンでも古株の関係者との対立が生まれています。新しいことをやるが故に、理解されないこともあるのです。しかし、グァルディオラはその選手・監督としての圧倒的な実績から周囲を黙らせてきました。同じように実績やカリスマで説得力を増している監督としては、アトレティコのシメオネ、フランス代表監督のデシャン、サンプドリアのミハイロビッチがあげられます。ミランのインザーギもこの中に加わるかもしれません。こういうプレイヤー時代のカリスマを上手く使った監督が出現する傾向を作ったのも、グァルディオラと言えるかもしれません。

 現実主義×育成×中間管理職=アンチェロッティ

アンチェロッティの最大の特徴は、その超現実主義とでも言うべき適応力でしょう。アンチェロッティほどチーム編成に対する希望を無視されてきた監督もいないはずです。ACミランではベルルスコーニ、チェルシーではイブラヒモビッチ、PSGではどの程度アンチェロッティの意見が反映されたかは分かりませんが、レアルでもペレスと欧州サッカー界におけるわがままな会長との付き合いが一番多い監督です。自らの意向が反映されない補強戦略の中で、それでも結果を出してきたのがアンチェロッティで、その点では突出した能力を持っていると言えるでしょう。

これは、非常に広い戦術の引き出しと、選手の能力を最大限に発揮するために戦術を選択するという、当たり前にもみえるポリシーを貫き通しているからこそと言えます。こういう監督は元ブラジル代表のスコラーリや、ロシア代表のカペッロなどが当てはまるように思います。カペッロは規律を重視するため誤解されがちですが、戦術は意外と柔軟です。

ちなみにアンチェロッティもかつては理想主義者というような監督でした。パルマ時代にファンタジスタであるゾラを使いこなせず、バッジョの獲得を見送ったことは有名です。そのアンチェロッティが変わったのはジダンとの出会いからだと言われています。

アンチェロッティが現実主義であり勝ち続けている最大の要因は、その育成力にあります。育成と言っても未熟な選手を育てるというよりは、その選手に新しい役割を与えてコンバートするという力です。その選手自身が理解していない自分の特性を生かすという意味では、アンチェロッティに勝る監督はいないでしょう。セードルフ、ピルロ、ヴェラッティ、ディ=マリア、イスコ、ベイル、等がその代表格ではないでしょうか。選手に能力があったことは勿論ですが、アンチェロティはその選手が新しい役割に取り組む時間を与えることで、その力を引き出します。あまり評価はされていませんが、インテルのマンチーニもそういう傾向のある監督です。

アンチェロッティの監督としての選手やメディアとの接し方は、中間管理職そのものです。限られた権限の中で最大限努力するとともに、選手を尊重する事で信頼を得ています。殆どの監督がそうしようと心掛けているはずですが、それこそが最も難しい事でしょう。

アンチェロッティの采配で特徴的なのは、機能していない選手の交代のタイミングが遅いことです。選手自身の修正能力を信じており、またその経験が先の試合に生きるように、選手の出場時間をなるべく長くとろうとします。シーズン前半の取りこぼしが多いのはそのためですが、そうすることで選手に対して信頼を示しています。この采配を意識してやってその上で結果を出している監督は、ビッグクラブでは殆どみることが出来ません。アーセナルのヴェンゲルぐらいだと思いますが、そのためヴェンゲルは勝てていないとも言えるでしょう。

その意味でアンチェロッティは、監督の一つの理想形と言えると思います。

版権: sportgraphic / 123RF 写真素材

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