アーセナルの夏の補強の様子が変わりました。昨年のメスト=エジル(レアルマドリーから)の獲得に続いて、今夏はアレクシス=サンチェス(バルセロナから)を獲得。夏は放出ばかりの印象だったアーセナルが変わりました。
こうなるとファンの期待は昨年のFAカップ優勝に続いて、11年ぶりのプレミア優勝です。昨年は後半の息切れで優勝戦線から脱落してしまいましたが、さらなる補強を行った今期であれば、その実現も不可能ではないはずです。何故補強戦略が変わったのか、これからの課題は何なのかを考えます。
補強戦略の変化
アーセナルといえば、長らくの間プレミアリーグの中でも健全収支の移籍をおこないながら結果を出しているチームとして有名でした。サラリーキャップ制度(年棒に上限を定めるルール)を導入し、移籍を希望する自チームのビッグネームに対しては適正な移籍金の提示があれば放出も辞さないというチーム方針でした。実際に移籍した選手を上げると、ヴィエラ、ティエリ=アンリ、セスク=ファブレガス、ナスリ、ファン=ペルシなどチームの中心の選手が多くいます。その方針がチームの弱体化を招くこともあり、そのことがたびたび批判される原因にもなってきました。
アーセナルが補強を見合わせていた背景には、スタジアムの建設費用がありました。現在のホームスタジアムであるエミレーツスタジアムは60,000人を収容できるサッカー専用競技場です。これを完成させたことでアーセナルはチームの収益の意味で、他のチームに対して大きなアドバンテージを持ちました。しかし、建設費用の支払金は非常に大きく、それを支払うために選手を集めるために資金を投下できないという背景がありました。このローンの支払いが順調に進んで残額が小さくなったため、アーセナルは昨年から積極的に選手に投資を行うことが出来るようになったのです。
それでも商売上手のイメージは変わりません。エジル、アレクシス=サンチェスはどちらも大金を投下したため、出しすぎではないかという声も聞かれます。しかし、実際には両選手ともまだ若く、アーセナルが再度移籍金を得ることが出来るというシナリオも考えられます。投資をするのであれば、若く伸びしろのある選手であるという、以前からの方針はまだ守られているのです。
2014-15シーズンの見通し
参照:Youtube
今シーズンの補強の目玉は、アレクシス=サンチェスでしょう。ファン=ペルシが移籍して以降得点力不足に苦しんできたアーセナルにとって、この決定力のある選手の存在は心強いはずです。アレクシス=サンチェスは純粋なセンターフォワードとは言えませんが、ゴール前に顔を出す頻度や決定力はストライカーにも劣りません。既存戦力では、好不調の波は激しいもののジルーもセンターフォワードとしての役割を果たすことが出来ます。また中盤の選手がセンターフォワードを務めることがあるため、現在の戦力で十分といえます。
今シーズンもチームの見どころは、運動量、攻撃センス、パスセンスを兼ね備えた中盤になります。エジルを筆頭に、ラムジー、カソルラ、ウィルシェア、アルテタ、ロシツキ、チェンバレン、フラミニ、ディアビ、等タイプの違うテクニシャンが絡むパスワークは必見です。
逆に不安なのがディフェンス陣。ギブス、コシエルニー、メルテザッカー、ドゥビュシーの4人がベストだと思われますが、他チームに比べるとやや劣る印象は否めません。
アーセナルのサッカーは攻撃重視で、守備の不安を振り払うような、華麗な攻撃サッカーが魅力です。逆に言えば好不調の波が激しく、シーズンの前半と後半では全く別のチームになってしまうようなこともしばしばです。そういう意味で、大規模な補強を行ったアーセナルですが、それでもプレミアリーグの優勝筆頭というわけではありません。潤沢な資金を市場に投下し続けているマンチェスターシティやチェルシーに比べると戦力的には一段落ちるといってもいいでしょう。
アーセナルがプレミアリーグの優勝戦線にどれだけからめるか。終盤まで自力優勝が可能なところにいられるのかどうかが、大きな注目ポイントです。
今だから問われるアーセンヴェンゲルの手腕
ヴェンゲルといえば、プレミアリーグで無敗優勝を遂げた名将であり、アンリやセスク、ウィルシェア、ファン=ペルシ―等を育てた名伯楽としても有名です。また日本ではかつて名古屋グランパスでも監督を務め、親日派としても知られています。
完璧な評価を受けているように見えるヴェンゲルですが、実際に現地での評価は分かれています。2003-04シーズンの優勝以来タイトルが無く、昨年度のFAカップのタイトルが10年ぶりのタイトルだったからです。前述の通り選手補強に思うように費用をかけることが出来ないチーム状況が、そういった状況を生んでいたのは確かです。しかしそれでも、ヴェンゲルに対して「勝ちきれない監督」というイメージを持っている人が多いこともまた事実なのです。
そういう意味で、エジル・アレクシス=サンチェスを補強した今、少ない予算で結果を出しているという評価を受けることはもうありません。純粋に結果を求められることになります。その中で一体ヴェンゲルがどういった結果を残すことが出来るのかが注目です。ノルマは最後まで優勝戦線に絡むことでしょう。近年のアーセナルはどこかで脱落してしまい、シーズンが終わるまで優勝の可能性を残していたことはありません。ヴェンゲルがすぐに首になるようなことはないはずですが、これだけの補強をした以上そういった結果を求められることになるでしょう。
また、ヴェンゲルには長期的に乗り越えなければいけない点がもう一つあります。それはアーセナルについてしまったイメージの払拭です。アーセナルには主力に十分な給与を払わず、簡単に放出してしまうというイメージがあります。それは過去の様々な移籍に対してついてしまったイメージですので簡単に拭い去ることは出来ないでしょう。しかしそれを乗り越えなければ、主力選手を長期的に確保し、新しいビッグネームを獲得することは難しくなります。現在主力に育ったウィルシェアやラムジーが、今後アーセナルの中で生え抜きとして、さらに成長し活躍する事ができるチームなのかどうかが問われているのです。
(写真:エミレーツスタジアムのアーセナルの盾 版権: vmorfield / 123RF 写真素材)
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