• 2019年 10月 15日

クリロナ、メッシ、ファルカオなど、大量得点ストライカーに見るサッカーの変化

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近年のヨーロッパサッカーでは、メッシやクリスチアーノ=ロナウドを筆頭に得点を量産する、スーパーストライカーの存在感が際立っています。1試合1点以上、あるいはそれに近い得点率というのは、かつてはレジェンドと言ってもよい選手が、キャリアを通して1度記録する事があるというような成績です。現在では毎年そういう選手が出現しています。それはいったい何故なのかを考えることで、今のヨーロッパサッカーのトレンドが見えてきます。

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ストライカーは進化したのか

ストライカーそのものの進化によって、得点が増加したといえるのでしょうか。

現在のストライカーは、かつてのストライカー達に比べてフィジカル面が明確にアップしています。筋力トレーニングのメソッドが進歩するにつれ、屈強なフィジカルを持つストライカーは増加傾向にあります。しかし、それが得点アップに必ずつながるとは言い切れません。同様にディフェンス側にも、屈強なフィジカルを持つ選手が多く表れているからです。

ディフェンダーも共に進化し続けているのですから、一方が極端に有利になることはありません。つまりストライカーは進化したが、それが大量得点を生み出すきっかけになったとは言えないというのが結論です。

では、なぜ大量得点をできる選手が増えたのでしょう。

攻撃戦術の進化

ここ10年のサッカーの戦術の進化は、攻撃戦術の進化と言えるでしょう。かつては、1トップ2トップ3トップという布陣や、選手の組み合わせが主体で攻撃について語られました。それが2000年代に入ると、ゼロトップ、ポゼッション、ショートカウンターと言った様々なキーワードで攻撃に関する議論が彩られるようになりました。

この背景にはその前に20年に、守備戦術が大幅に進化した背景があります。ゾーンディフェンスやラインディフェンスという考え方が、プレイエリアをどんどんと狭くした結果、それを突破する攻撃戦術が求められるようになったのです。

攻撃戦術の進化に伴い、今では当たり前のようになったのが、攻撃に厚みを加えるという考え方です。両サイドバック、インサイドハーフ、著しい場合にはセンターバックまでが攻撃に参加します。センターラインより後ろにプレイヤーがいないというシチュエーションもしばしば起こっています。

攻撃に参加する人数が増加した結果、フィールド上のいたるところで1対1が発生することとなりました。

昔は、各チームが強固なディフェンスを展開していた時代には、少ない攻撃の人数で多くのディフェンダーが守るゴールをせめ落とす必要がありました。オフェンス対ディフェンスの数はオフェンス3~5に対してディフェンス5~10というような状態でした。ストライカーは2人、3人と突破しなければ、ゴールを奪うことはできない時代だったのです。

しかし現在の攻撃戦術の中では、オフェンスの数7~8に対してディフェンスの数は8~10といったところでしょうか。

結果、一人のプレイヤーに対応するディフェンスの人数が減少したします。そうなると、密集地帯の1対1を突破できるストライカーは、ゴールを狙いやすくなるのです。

マンマークの弱体化

前述の通り、狭いスペースで1対1を攻略できることが、点をとれるストライカーの条件になっています。つまり、ストライカーがディフェンダーの能力を上回っていることが必要なのです。そうなるとストライカーの能力とともに、ディフェンダーの能力も考えなければいけません。

そういう意味において、現在のディフェンダーの守備力そのものが減衰傾向にあることも、大量得点をするストライカーが複数あらわれていることと関係があります。

チームの守備力は、守備戦術の進化によって強化されています。しかしその守備戦術の強化が、逆に個人の守備能力の減衰を招いている部分もあるのです。ゾーンディフェンスはチームで守る考え方です。自分より能力の高いストライカーでも抑えられる代わりに、必ず一人のディフェンダーが相対するオフェンスのプレイヤーを止める必要がありません。そういう環境の中で、ディフェンダーにはかつてほど1対1で止める守備力が求められなくなったのです。

このことについては、特に守備戦術の浸透が早かったイタリアなどでは顕著であり、アッズーリ(イタリア代表)はカンナヴァーロ、ネスタ、マルディーニ、コスタクルタ、バレージといった歴代の面々に比べてディフェンダーが弱体化しています。スペインでいえばイエロやプジョル、イングランドであればテリーやファーディナント、フランスでいえばデサイーやテュラムの後継は十分とは言えない状態です。

話はそれますが、面白いのはドイツと中堅国、南米国です。ドイツはそもそもがリベロの国柄だったためか、コーラーやマテウスに遡らなければ、印象的なディフェンダーが活躍していません。中堅国、南米国のディフェンダーは粘り強く1対1に優れた選手が多く排出されるようになりました。かつては南米の選手といえば攻撃的な選手が相場でしたが、今では多くのディフェンダーを輩出しています。これはヨーロッパ諸国のディフェンダーの守備力が減衰する中、よりマンマーク的性質の強い中堅国のディフェンダーに活躍の場が与え荒れていると考えるべきでしょう。

では現在のディフェンダーが能力的に劣っているのかというとそうではありません。現在のディフェンダーは攻撃の起点として、歴代のディフェンダーをはるかに上回る能力を持っていると言えるでしょう。これは攻撃に参加する人数が増えるという、攻撃戦術の流れから考えると必然と言えます。

しかし攻撃能力が求められるからこそ、またマンマークの力が育たなかったということも言えるのです。

これからのストライカー像

様々な能力を求められる中でマンマークの能力が減衰していくディフェンダー陣が、組織的戦術で守るゴールを脅かすためには、敵と味方が入り乱れる狭いスペースの中で、ディフェンダーを上回る事ができるストライカーが求められています。

結果、足元が上手くディフェンスラインより前、ないしはライン際でボールを受けるタイプのストライカーが活躍する時代になるのではないでしょうか。

クリスチアーノ=ロナウド、メッシ、ジエゴ=コスタ、スアレス、等のストライカーの面々を見ても、全線で基準点となり狭いスペースで勝負できるのが特徴です。

ファルカオは、他のプレイヤーに比べるとクラシックなストライカーで、点で合わせるタイプと言えますが、それでもかつてのインザーギ、ラーション、ロナウド、リバウドなどに比べると基準点の役割を果たす割合は格段に多くなっています。

面白いのはイブラヒモビッチで、体格やプレースタイルから考えると、ヴィエリやヤン=コラーのようになってもおかしくなかったのですが、最近ではトップ下も務めるなど、時代に最も合ったスタイルに落ち着いているように思います。

この流れがいつまで続くのかわかりませんが、現在のトレンドである「狭いスペースでディフェンスとの勝負に勝ってシュートを打つ」というストライカーのスタイルを意識しながら、サッカーを見るのも面白いのではないでしょうか。
(アイキャッチ画像:クリスチアーノ・ロナウド 版権: sportgraphic / 123RF 写真素材

 

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