各クラブのゴール裏。主に「ウルトラス」と呼ばれる熱狂的なサポーターが支配する、各クラブを象徴する様な空間が、そこには拡がります。日本のJリーグでも、ゴール裏で様々なトラブルが発生した事もありますが、彼らの一挙手一投足がクラブに与える影響力は非常に大きく、そのひとつの行為にボイコット行為があります。観戦や応援のボイコットを行う理由としては、チケットの高騰や不甲斐ない成績など様々ですが、今季のスタディオ・オリンピコでは、同様にローマのウルトラスがシーズン開幕時から抗議活動を続け、そしてその抗議活動は観戦ボイコットにまで発展してしまいました。果たして、彼らの怒り、その理由とは??
「牢獄」の様な状況に耐えられないロマニスタ
今季、スタディオ・オリンピコでは大きな動きがありました。北・南共にゴール裏を取り囲むかの様に、防護柵が新たに設置されたのです。この防護柵ですが、ローマ市と警察が「スタジアムの治安維持」を目的として設置しましたが、これはあくまで名目上のものであり、過激で有名なローマとラツィオの両ウルトラスを完全に隔離し、警察や警備員で囲い込む為に設置したものなのです。あたかも「牢獄」の様になってしまったゴール裏ですが、この策に抗議する様な形で、ローマのウルトラスによる観戦ボイコットが始まりました。彼らの行動は批判チャントや辛辣な横断幕だけに止まらず、ついにはスタジアムへの入場を拒否する姿勢を取ったのです。スタディオ・オリンピコの外では、ローマのウルトラスによる批判チャントが大音量で鳴り続けています。
ローマ・ダービーでも異様な雰囲気は収まらず
ローマの街を二分しているローマとラツィオによる「ローマ・ダービー」が11月8日に開催されましたが、絶対に負けられない戦いであるローマ・ダービーにおいてもローマのウルトラスによるボイコットは続き、クルヴァ・スッド(ローマのウルトラスが陣取る南側ゴール裏)はガラガラの状態でした。実はこの日、クルヴァ・スッドだけでなく、クルヴァ・ノルド(ラツィオのウルトラスが陣取る北側ゴール裏)もガラガラだったのです。これは、防護柵の設置に対してラツィオのウルトラスも横断幕やチャントで抗議を行っていましたが、ロマニスタとの初めての「共闘」により、ラツィオのウルトラスも観戦ボイコットへと進んだのです。長い歴史の中で、強烈な敵対関係を築いた彼らが行動を共にするのは初の事であり、それを象徴するスタディオ・オリンピコの空席ぶり(特にゴール裏)は、異様な光景となっています。
見えない解決への糸口
ローマの会長が問題解決に向けて動きだそうとしていますが、具体的な解決策は見いだせておらず、解決にはまだまだ時間が掛かりそうな気配です。警察ですら具体的な解決策が無く、暴力を押さえつけるしか無い状況なのです。
ラツィオのロティート会長による、カルピのセリエA昇格に関する発言が物議を醸しましたが、その渦中にいたカルピのサポーターもローマのウルトラスに同調する動きが見られており、この騒動はイタリア全土に拡がる可能性も秘めているのです。
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