• 2019年 10月 19日

芯を持ったサッカージャーナリストの視点。ヘスス=スアレス『英雄への挑戦状』

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英雄への挑戦状

本書『『英雄への挑戦状』』は、ワールドサッカーダイジェストの名物コラムニストであるヘスス=スアレス氏による、ヨーロッパで活躍する現代の名選手に対する評論集です。ヘスス=ナバスともルイス=スアレスを合わせたような名前が印象的ですが、名前より本文の方がよほど印象的です。パスサッカー原理主義者とでも言うべき作者の論調は、いっそすがすがしさを感じるほどで、クリエイティブでないサッカーに対しては、どれほどの名選手であろうとも凡庸と言い切ります。しかしそのサッカーへの造詣の深さは疑いようもなく、評価するべきところは評価する姿勢は、ジャーナリストの鏡とも言えるものです。そんな氏の魅力が詰まった一冊は、必読とも言える内容です。

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クリスチアーノ=ロナウド

何と言ってもヘスス=スアレスの魅力といえば、その頑迷なまでのパスサッカー信仰です。クリスチアーノ=ロナウド(以下Cロナウド)という当代きってのスーパースターをもってして、サッカーを創造するという意味では凡庸と言い放ちます。そういう意味で、最も注目の論評はCロナウドの論評と言って間違いないでしょう。

本書ではCロナウドの生い立ちや性格をエピソードとしても紹介しており、その精神性に対して高い評価とある種の共感を示していることが、とても意外でした。特に幼少期のエピソードに対しての文章は、Cロナウドが現在の強さを得るための根源的な部分を垣間見せてくれます。選手の魅力を伝えるという、氏のジャーナリズムの原点を感じさせてくれます。

また、以前『クリスチアーノ・ロナウドにみる選手の進化』という記事でも触れましたが、文末ではクリスチアーノ=ロナウドがサッカーの創造性を身に着けつつあると捉えることができる書き方をしており、氏のCロナウドに対する評価の変化を伺わせる内容になっています。本書だけではなく、これから氏がどのようにCロナウドについての記事を書いていくかも、注目です。

他リーグ選手への論評

普段はリーガエスパニョーラの記事を書いていることが多い中で、今回は他のリーグの選手に言及しているのが非常に新鮮です。

特に評価が高かったのは、ピルロとラームの両者です。どちらも非常に高いフットボールインテリジェンスの持ち主で、試合をコントロールできる力を持っており、いかにもというチョイスです。

興味深かったのはロッベンです。個人能力を高く評価したうえで、ソリストという特長を分かりやすく説明していました。イブラヒモビッチにたいしても非常に高く評価をしており、バルセロナでもっと見たかったという意外な感想も記されていました。

もっと様々な選手に対する感想も読んでみたいと思わせる内容なので、是非ワールドサッカーダイジェストかどこかで定期連載をしてほしいものです。

ルイス=スアレス

最も興味深かったのは、ルイス=スアレスに対する論評でした。苗字が同じだと思ってはいましたが、ヘスス=スアレス氏がウルグアイ出身で、ルイス=スアレスにシンパシーを感じていたことは初めて知りました。

氏はウルグアイのサッカーの特長をその闘志と考えており、ルイス=スアレスの奇行とでも言うべき様々なトラブルに対しても寛容な姿勢をしめしていました。ただしこれはワールドカップの前に書かれた内容なので、ワールドカップで再び噛みつき事件を引き起こしたルイス=スアレスに対しての評価を、今一度聞いてみたいようにも思います。

プレイそのものに対する評価も、勿論非常に興味深いものですが、それ以上に氏が持つウルグアイという国に対する愛情を感じる文章です。パスサッカー原理主義者としての一面以外を見ることができる、ヘスス=スアレスというジャーナリストの魅力が詰まっている論評でした。

 

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